明珍 宏和「幕が上がる、その前に」第5回 ── Ⅳ.未来への願いと声楽家を支える社会の在り方

私たちが目指すべき音楽界は、

単に舞台や演奏会の数が増えることではありません。


声楽家一人ひとりが安心して学び、表現し、挑戦できる環境が整い、

地域社会と密接に結びついた持続可能な文化の循環が生まれることを目指しています。


それには声楽家自身の努力に加えて、

団体や地域社会の支援、制度の整備が不可欠です。



未来の音楽界では、若手声楽家が舞台で得る成功体験や失敗体験を通じて成長し、

中堅やベテランの声楽家がその成長を見守り支える文化が欠かせません。


舞台での一瞬の響きや観客の反応が、

声楽家の自信や表現力を育み、次の舞台へとつながります。


その連鎖を丁寧に見守ることが、健全な音楽界の根幹を支えます。


声楽家の挑戦を「自己責任」に押し込めず、

団体や地域、社会全体が支える仕組みを作ることが大切です。


努力や苦労をすべて個人の責任とするのではなく、

支援の仕組みを整えることで、

声楽家は安心して音楽に打ち込み、

その成果は社会全体の豊かさとして還元されます。



私たちが整えようとしているのは、単なる舞台ではなく、

声楽家の成長と社会の文化的成熟を両立させる環境です。


若手が安心して挑戦でき、地域と世界をつなぐ声楽家が育つ──。

その循環を生み出すことが、私たちの願いであり責任です。


読者の皆さまも、声楽家の活動に関心を持ち、

耳を傾け、支えの一翼を担っていただければと思います。


若き声楽家のひたむきな響きの中に、音楽の未来が息づいているのです。

そしてその未来を育てることこそ、健康で持続可能な音楽界を築く第一歩となります。




(この項、おわり)





プリンスオペラ 主宰

明珍 宏和







Prince OPERA

北区から世界へ。 プリンスオペラは 地域に根差した質の高い芸術を育て 世界に向けて発信していくことを 目指しています。