3/29 羊飼いの少年役・浅田眞理子さん インタビュー

 プリンスオペラ第1回公演「トスカ」。


 みなさまのインタビューをお届けしています。


 第16回は、3/29 羊飼いの少年役・浅田眞理子さんです。


浅田眞理子(あさだ まりこ)


国立音楽大学卒業。武庫川女子大学専攻科修了。国立音楽大学大学院オペラ科修了。


その後ミラノに留学し、現地にて「ドン・ジョヴァンニ」ツェルリーナ役でイタリアデビュー。日本では「コジ・ファン・トゥッテ」(デスピーナ)、「電話」(ルーシー)に出演の他、ベートーヴェンの第九のソプラノソリストを務める。


2021 年 3 月、堺シティオペラ「愛の妙薬」アディーナ役を演じた。



──昨日の公開通し稽古、おつかれさまでした。場当たり(※歌・音楽なしで、舞台での演技のみを確認する工程)の時から感じておりましたが、浅田さんは歌・演技を含めた「舞台表現」に卓越したセンスと構成力をお持ちでいらっしゃいますね。今回の角直之演出では、羊飼いの少年は合唱団の方々ともご一緒に演技をする場面が多く見られます。その中でも、全体を俯瞰したバランスを持ちながら、自分が美しく見える動きを探りながら、ご自身の身体を通じて表現されているご様子が、非常に印象的でした。



「ありがとうございます。演じることは幼い頃から好きでした。自分ではない誰かになるのが、すごく好きだったんです。幼い時からディズニーのパレードが大好きでした。テレビでパレードを流して、その中で踊っている誰かになりたいと思ってきました。


 幼い頃から家族の転勤について、小学校は福島、中学校と高校は大阪に通いました。福島は合唱の盛んな県。合奏部か、合唱部で迷っていた時に、お隣の方から『眞理子ちゃん、声が大きいから合唱やってみたら?』と勧められました。全国レベルの合唱を目指す小学生時代を経て、家族の大阪への転勤が決まったとき、コンクールでも好成績をあげる中学校を受験しました。その学校には、音楽科の運営する音楽教室も併設されており、専門的な学びの基礎をそこでかためました。


 自分自身を客観的に眺めてみると、演技だけでなく、歌も、バレエも学んできて、舞台で表現すること全般の能力を育てたいと思ってきたような気がします。今でもピアノの前に立って歌曲のリサイタルをすることよりも、みんなで何かを作り出したい、みんなで同じゴールを協力して目指したいというのが、すごく好きなんです。それは、合唱部での経験も根底にあるのかもしれません。


 舞台では、演じることができる。演技をしながら、違うものになることができる。それは、オペラをやっている上でも喜びです。」




──演じる喜び、浅田さんの表現からあふれるほどに伝わってきます。さて、今回の角直之演出では、「牧童」ではなく「羊飼いの少年」という表記がされているところにも、大きな意味が委ねられているように感じております。全幕にわたって、演技面においても大きな役割を果たされる羊飼いの少年。通し稽古で全幕演じられて、いかがでしたか?


「少年役、いわゆる〈ズボン役〉をさせていただくのは初めての挑戦です。五線よりも下の音を表現するのも、あまりない試み。羊飼いの少年は、本来はボーイソプラノが演じることが多い役ですが、女性である私が演じる意味を考えています。指揮者の澤村さんからは、『明るくて、それほど太くない声のイメージで』という助言もいただき、《トスカ》の音楽全体の中で、この役が果たす役割を考えています。演出家の角さんからは『羊たちを統括してほしい』という指示もいただきました。


 今回の演出において羊飼いは、女とも男ともつかない存在のように感じています。ただ〈統括する〉という言葉から、どちらかというとメンズ寄りなのかなとも考えたりしています。稽古を重ねるうちに、羊飼いの少年という役の人となりも見えてきた気がします。羊たちを統括するためにドシッとした存在感も持ちつつ、子どもっぽさのバランスを共存させることを心掛けています。シリアスな内容の作品ですが、その中に明るい朝の光をもたらせるような存在として演じられたらいいですね。」




──羊飼いの少年が象徴する明るさ、すがすがしさは非常に伝わってきます。プリンスオペラでは「北区から世界へ」というメッセージを掲げて、第1回公演に向けての日々を過ごしてまいりました。北区とのご縁が深い浅田さんにとっても、特別なカンパニーなのではないかと思います。北区、そしてプリンスオペラというカンパニーに参加された印象など、自由にお話いただいてもよろしいでしょうか。



「私は北区十条の近くに暮らしています。いまのインタビュー中にも声が聞こえたかもしれませんが、パグのアゴとカツオとの日々を送っています。母の実家もそばにあって、子どもの頃からの懐かしさを感じる町です。十条銀座も、昔とはずいぶん変わりました。私が子どもの頃は、おでんのタネを売っているお店や、ザルに入れた野菜を売っている八百屋もありましたが、徐々に姿を消してしまいました。


 ただ、十条の駅前には新しくタワーマンションも建ち、新しい区の施設も入ったと聞いています。また写真でしか見たことがありませんが、本の紹介がされているスペースや、広い会議室などもあるようなので、今度行ってみたいなと考えています。北区はいまブランディングに力を入れているので、より新しい魅力が発信されていくといいなと思います。


 プリンスオペラでは、嬉しい再会が多いです。『はじめまして』の方でも、以前からの仲のような心地よさを感じています。こうしてお話させていただいても、共通点が多く、とても嬉しいです。指揮者の澤村さん、演出の角さんとは『はじめまして』ですが、細かいところまでの作り込みや、伏線回収の仕掛けなどがお二人とも共通していて、表現者としての興味と好奇心をもって稽古に参加しています。通し稽古も終わり、あとはホールに入ってゲネプロと本番を迎えるのみとなりました。終わってしまうかなしみもありますが、いいものを作り上げるために全力で演じ、歌おうと思います。


 代表の明珍さんは、とても幅の広い方です。初めてお会いした時には、とても真面目な堅い印象をお声や話し方から受けたのですが、よく見てみると『ちびまる子ちゃん』のシャツを着ていらしたりと、ユーモアセンスもある方だなと感じています。東京王子ロータリークラブで明珍さんがお話された時には、お話と構成の巧みさに感嘆したと身内の者が教えてくれました。


 羊飼いの少年として、今回の演出ではいろんな方と関わる役回りを演じていますが、稽古場でのなにげないお話などを通じても『人とのつながり』の重要性を、あらためて感じる日々です。人と出会ったり、つながったりすることによって、これまでにない何かを生み出すことができる。プリンスオペラは、そんな場だと感じています。」



──『人とのつながり』を大事にされる、浅田さんのお人柄と優しさを感じます。それでは、明珍さんからお預かりした質問を、最後にお尋ねいたします。


「あなたが歌う理由を、お聞かせいただけますか?」



「……やっぱり、誰かの笑顔を目の前で見たいから、なんだと思います。いえ……笑顔だけでなく、涙、喜び、時には苦しみや悲しみといった感情が生まれていく瞬間が好きなんです。目の前にいる人の感情が動くのを見守るのが、好きなんです。舞台はナマモノ。そこでしか味わえない喜びがあります。だから、ずっと続けていきたいです。


 子どもの頃に、妹が『尊敬する人物は誰ですか?』と尋ねられた時に、『姉です』と答えてくれたことがあったと聞きました。ひとつのことに、脇目もふらずに取り組んでいる様子を見て、心打たれた様子だったと、母が教えてくれました。普段はクールでそんな素振りも見せない子なので、そのギャップに驚きました。でも、嬉しかったです。そして、脇目もふらずに子どもの頃から、表現に取り組み続けていられることを誇らしく感じます。


 これからも、いろんな人の前で歌っていきたいです。そして、私の歌や演技、表現で心を揺さぶってもらえるような瞬間を重ねていきたいです。」




 たおやかで優しい佇まいの浅田さん。インタビュー中も、鈴のような笑い声と、穏やかな語り口が非常に印象的でした。


 けれど、アクティングエリアに入ると、その印象はがらりと変わります。舞台人としての誇りを持ち、自身の才と能力で舞台の色を鮮やかに変える。表現と共に生きてきた浅田さんの積み重ねてきた重みを感じました。


 羊飼いの少年が『トスカ』の開幕を告げます。浅田さん演じる羊飼いの少年、どうぞお楽しみに。


 浅田さん、ありがとうございました。公演に向けて、どうぞよろしくお願いいたします!




プリンスオペラ第1回公演「トスカ」は、

2026年3月28日(土)・29日(日)

北とぴあ つつじホールで上演いたします。


公演情報はこちらをご覧ください。


チケットは、ほくチケ(オンライン)、

ならびに北とぴあ1階窓口にて好評販売中です。

オンラインでのお申込みはこちらからお願いいたします。


◎ほくとぴあチケットオンライン

https://p-ticket.jp/kitabunka


みなさまと北とぴあでお会いできますことを、

心より楽しみにしております。




Prince OPERA

北区から世界へ。 プリンスオペラは 地域に根差した質の高い芸術を育て 世界に向けて発信していくことを 目指しています。