《仮面舞踏会》初日組 リッカルド役・工藤翔陽さんインタビュー

 プリンスオペラ第2回公演《仮面舞踏会》。公演に向けて、キャストインタビューを進めております。


 インタビュー第2回は、オーディションで抜擢された〈初日組〉リッカルド役の工藤翔陽さんです。メールでお話をお伺いいたしました。


工藤翔陽(くどう しょうよう)


鹿児島県出身。昭和音楽大学卒業。同大学院修了。第11 回昭和音楽大学学長賞声楽コンクールで優秀賞(第1位)。2018年文化庁大学における文化芸術推進事業日中韓新進歌手交流オペラプロジェクト「ファルスタッフ」フェントン役で出演。日生劇場主催公演 NISSAY OPERA 2019「トスカ」スポレッタ役で出演。藤原歌劇団には2021年歌劇「ジャンニ・スキッキ」ゲラルド役でデビュー。その後、藤原歌劇団には、同年、新国立劇場にて開催された歌劇「清教徒」ブルーノ役、2022年「イル・トロヴァトーレ」ルイス役、2025年「ロメオとジュリエット」ティバルト役、2025年「ラ・トラヴィアータ」ガストン役で出演し、いずれも好評を博した。東京・春・音楽祭2023「トスカ 」公演で世界的歌手ブリン・ターフェル氏と共演し、好評を博す。これまでに「愛の妙薬」ネモリーノ、「椿姫」アルフレード、「コジ・ファン・トゥッテ」フェランド、「魔笛」タミーノ、「トゥーランドット 」ポン、「ラ・ボエーム」ロドルフォ、「つばめ」ルッジェーロ、「ナクソス島のアリアドネ」バッカス、「アイーダ」ラダメス等で出演する他、「交響曲第9番」や「メサイア」等の宗教曲のソリストも務める。藤原歌劇団団員。男性ヴォーカルユニットURANOメンバー。



◆どんな子ども時代を過ごしてきましたか? その頃の思い出、そして忘れられない子ども時代の思い出の味と共に教えていただければ幸いです。


 子ども時代の記憶で、今でも濃い記憶に残っているのは、5、6歳の頃に引っ越しをして、新しい幼稚園に入園した直後の事です。全員で縄跳びをする時間があり、その日は引っかかったらその場に座っていくというゲーム感覚で挑戦していくものだったのですが、なわとびは全く経験がなく、一度も飛べませんでした。

 先生から「翔陽は初めてだから座らないで練習してていいよ」と言われ、次々とみんなが座って行くなか、なんども引っかかりながら挑戦しましたが、1回跳べるか跳べないかやっとでした。もちろんほとんどの生徒が十数回〜数十回跳んでおり、1人だけ立ち続けていることへの恥ずかしさや、出来ないことへの悔しさを痛感したことを鮮明に覚えています。

 そこからの幼稚園生活の記憶は、毎日の自由時間に縄跳びを練習していて、小学生になってもほぼ毎日のように練習し、小学校の縄跳び検定は上級までいけるほどに成長し、学年でもトップレベルの縄跳び実力者になりました!

 思えばこの頃から負けず嫌いだったのかもしれません。

 子ども時代の思い出の味、思い返すとたくさん出てきます!笑

 シャバシャバのバ◯モントカレー、ばあちゃんの作るパエリア、3時のおやつとして毎日にように食べていたセロリ、お正月の定番だったまぜ寿司と煮物。

 色々とある中でも特に恋しくなるのは、「ヘチマの味噌汁」です。東京に出てきてからヘチマをスーパーで見かけなくなり、実家では定番だったのでこちらで作ることが出来ず少し寂しいです。




◆工藤さんが歌を始められたきっかけを、教えていただいてもよろしいでしょうか。


 歌を始めたきっかけは、小学5年生頃。当時、従姉が地元の小中学生による合唱隊に所属しており、その合唱隊の「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」の演奏を聴いた時です。

 私はあまり覚えていないのですが、母によると「この曲を歌いたい!」と言ったらしく、音楽経験は全くなかったのですが、その後、合唱隊のオーディションを経て入隊。

 機会に恵まれ、その合唱隊としての初のパフォーマンスの場がドイツの小さな村の教会となりました。

 これが私の人生初の舞台になったと思います。10日間ほど滞在し、ドイツとオーストリアで何度か演奏を行いました!

 その合唱隊で出会った先生方に憧れて音楽教師を目指し、声楽を高校、大学で学ぶ中で、オペラと出会い、オペラ歌手としての道に進みました。

 きっかけをくださった先生方には、今でも大変感謝しています。



◆歌を始めたばかりの頃やオペラ歌手になる途上において、忘れられない出会いや時間があったらお伺いしてもよろしいでしょうか。


 音楽家は裕福な家庭が多いイメージですが、私の家はそうではなく、いわゆる貧乏な家庭だったと思います。

 高校は音楽科に通っていて、当時の修学旅行は、ウィーンとパリだったのですが、お金のなかった私はクラスで1人、修学旅行に行くことが出来ませんでした。

 修学旅行の間も登校はしていましたが、授業はなくほとんど自習で、約1週間は自由時間のような学校時間でした。そのほとんどを音楽室にあったオペラのDVDを見て過ごしました。

 そこで、Rolando Villazònという歌手に出会いました。この人が役を演じている時の喜び、悲しみ、覚悟、怒り、愛情などあらゆる感情を表現する姿をみて「こんな風に歌いたい、演じたい」と思ったのが、私がオペラ歌手を目指そう!と思ったきっかけです!

 大学進学で上京後、彼が来日したオペラ公演を観に行き、サインも頂きました。他の方には普通のサインだったのですが、私のサインは特別に自身のイラストも描いた珍しいサインを頂きました!今でも家宝です。

 もし、修学旅行に行っていたら彼に出会うこともなかったかもしれず、もしかしたら違った未来だったかもしれません。



©山本雄太



◆現在はどのようなレパートリーを中心とされていますか? また、これからどのようなレパートリーを育てていきたいですか? あわせてお伺いできたら嬉しいです。


 レパートリーについては、よく聞かれることではありますが、実は今でも模索し、試行錯誤している段階です。

 学生時代から色々な言語の歌曲やオペラを歌ったりしてきましたが、まだまだ自分の可能性を模索しています。

 少し前までは、セコンドと言われるいわゆる脇役を演じる機会を多くいただいていました!

 演じることは私も好きでしたので、物語や主役を引き立たせる役にはやりがいも大変感じていました!

 それと同時に、声については学生時代から悩みも多く、なかなかプリモという主役級の役に挑戦する勇気が最近まで持てなかったところもあります。

 30代になり、プリモもセコンドも合わせて色々な役に挑戦する中で、自分の成長も感じるようになりました。そこからプリモを演じる勇気が少しずつ湧き始め、色々なオーディションを受けながら自分がどういう役が出来るのか、レパートリーになるのか探しているところです。

 今回の仮面舞踏会のリッカルドという役も学生時代から憧れた役であり、一つの挑戦でもありましたので、オーディションで選んでいただき大変嬉しいです。

 リッカルドが自信をもってレパートリーと言えるように、試行錯誤して育てていきたいです。

 プリンスオペラさんで、皆さんと作り上げていく仮面舞踏会が、そして自分のリッカルドがどのようになっていくのかとても楽しみです!



◆今回の《仮面舞踏会》についてお伺いいたします。あなたが担当される役について、いまの想いを自由に綴っていただければ幸いです。


 今回リッカルドを演じるにあたり、改めて彼の「人を愛する力」の大きさに惹かれています。

 民を思いやり、友であるレナートを心から信頼し、そしてアメーリアを深く愛する。とても懐の広い人物である一方、その純粋な人間性ゆえに、愛と友情の間で苦しむことになります。

 特に印象的なのは、アメーリアへの想いを最後には自ら手放し、彼女の幸せと名誉を守ろうとする姿です。自分の感情を貫くのではなく、信頼する友人と愛する人のために身を引く。その決断に、リッカルドの強さと優しさがあるように感じています。

 一人の人間としての喜びや苦しみを抱えながら、それでも最後まで人を信じ、愛し、そして赦す。そんなリッカルドの姿を、音楽とともに大切に描いていきたいと思っています。

 皆様にも、彼の持つ温かさと、愛ゆえの苦悩を感じていただけましたら幸いです。


◆最後に、この記事を読んでくださる方々へ、公演への想いをお届けいただけますか?


 今回、オーディションを経て『仮面舞踏会』のリッカルド役を任せていただくことになり、とても嬉しく、そして身の引き締まる思いです。

 プリンスオペラさんは、若い歌手に本格的な舞台経験の機会を与え、経験を積んだ歌手と若手が同じ舞台で互いに刺激を受けながら作品を作っていく。その環境そのものに、大きな魅力を感じています。

 今回のオーディションは35歳までだったこともあり、8月に35歳になった私は、キャストの中でも上の年齢になります。

 私からみても若い、20代の歌手もたくさんいるので、フレッシュな歌手たちと共に公演出来ることが非常に楽しみです!

 また、プリンスオペラさんは第2回目の公演というまだまだ新しいオペラ団体だからこそ、一つ一つの公演がこれからの歩みを作っていくのだと思います。その大切な一歩に、自分がリッカルド役として参加できることを、とても光栄に思っています。

 今回の舞台が、出演する私たちや、プリンスオペラに関わる皆様にとって、また、劇場に足を運んでくださる皆さまにとっても、心に残る時間になるよう一日一日を大切に積み重ねていきたいと思います。

 ぜひ会場で、今この瞬間にしか生まれない音楽を、舞台を、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

 皆様のご来場をお待ちしています!



 今回、リッカルド役のオーディションは特に難関であったとお伺いしました。その中で見事、栄冠に輝いた工藤さん。誠におめでとうございます。


 プリンスオペラSNSに掲載されておりますご紹介映像からも、その素晴らしい歌声をお聴きいただけます。また、来年1月17日(日)に北とぴあつつじホールで開催の「プリンスオペラ《仮面舞踏会》オーディション合格者お披露目コンサート」においても、歌声をご披露いただきます。こちらのご紹介については、いましばらくお待ちいただければ幸いです。


 工藤さんのリッカルド、どうぞお楽しみに!



 プリンスオペラ第2回公演《仮面舞踏会》は、2027年6月26日(土)・27日(日)北とぴあさくらホールで上演いたします。


 それに先立ち、2027年1月17日(日)北とぴあつつじホールで「プリンスオペラ《仮面舞踏会》オーディション合格者お披露目コンサート」を開催いたします。詳細については、発表までいましばらくお時間をいただければ幸いです。


 総勢60名の応募者の中から抜擢された合格者のみなさまの歌声と音楽、来夏6月の本公演に向けてどうぞお楽しみください。







Prince OPERA

北区から世界へ。 プリンスオペラは 地域に根差した質の高い芸術を育て 世界に向けて発信していくことを 目指しています。